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Technology meet Real Vol.3 ドローンにカメラを積むのはもう飽きた。

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こんにちは、FabCafe Tokyoのカナオカです。今回は、僕が今気になっている、そして、何かとニュースになっているドローンについてと、その普及による可能性を考察したいと思います。

気になる存在、ドローン

ここでいうドローンとは無人航空機のこと。小さな4つのプロペラがついた、片手に十分収まるようなサイズから、エンジンを積んだ大型の軍用のものまで多種多様です。ちなみにドローンとは英語で雄ハチの意。”ここでいうドローン”と断ったのは、ドローンという語は本来は、地上や水中も含む無人機の総称。ただし、ドローン=無人航空機という認識が一般的になりつつあるため、この文章では特に小型の無人航空機について考察します。

ドローン、最近何かと話題です。ドローンで撮影したビデオがYoutubeで話題になったり、Amazonが配送サービス用のドローンのテストを公開したり。小型のものであれば数千円でカメラ搭載のドローンを手に入れることができるようになりました。

ドローン。一見するとただのラジコンとも思えます。なぜここまで話題になるのでしょうか。ドローンの普及は何をもたらすのでしょうか。

実用化されるドローン

無人航空機という意味でのドローンの研究は古くからあり、特にアメリカはいちはやくドローンをはじめとする無人機の開発に着手しました。第二次世界大戦時から飛行爆弾や、新型ミサイルの評価用の標的機としてドローンを研究・開発し続けています。

その後、戦場の様子が日々報道され、自国兵士の戦死者数が世論形成に直結するような湾岸戦争やイラク戦争では偵察目的や武装をしたドローンが実用化され、実戦配備されています。

偵察衛星より柔軟で、常に戦場を飛びスタンバイし、場合によっては前線からの要請により攻撃や威力偵察など能動的なアクションができるネットワークとして運用されているようです。

また、ポケットに収まるようなサイズのドローンと小型のモニタで運用できるような小型のドローンの配備が前線の兵士へ始まっており、行軍時の周辺警戒や偵察に運用されています。


▲米空軍のドローン、MQ-9 リーパー。翼下にミサイルを装備している


▲ポケットサイズのドローンを持つアフガニスタンに展開中の英軍兵士。カメラとGPSを搭載し、25分間の飛行が可能

実用化の先例としては軍事分野で先行しているドローンですが、その商用化は急速に広がり始めています。

ドローン×サービス

軍事分野での利用以外ではドローンは現状どういった利用がされているでしょうか。
1番シンプルなものとしては”撮影”があります。ドローンにGo Proやカメラを積んでの空撮今までは不可能であったアングルでのダイナミックな撮影が可能になり、映画製作やテレビの撮影に一般的に使われており、多くのドローンのホビーユースの目的も、上空からの撮影に帰着をみています。

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▲DJI社のドローン、INSPIRE1。4Kカメラを搭載し、映画撮影などで使用される。http://www.dji.com/product/inspire-1


▲ドローンで撮影された映像。従来は難しかったアングルからの柔軟な撮影が可能になった。

数千円のカメラつきドローンが手軽に手に入るようになった中、ドローンをサービスにつなげる動きも出てきています。主に”輸送”サービスの試作です。

近頃話題になった事例として、Amazon.comによる注文した商品をドローンで配送してくれる”Amazon Prime Air”という、サービスです。

Amazonの配送センターから30分以内の距離に、重さ5ポンド(約2.3kg)以内の商品を配送できるというサービスです。現在アメリカでこういったサービスを展開するにはFAA(アメリカ連邦航空局)に安全性の認可を受ける必要がありますが、2015年にもサービスを開始したいと考えているようです。
(ちなみに2015年2月現在のアメリカでは”個人”でドローンを使ったサービスをビジネス化することは、安全性の面から原則禁止。)

Amazonによる試み以外にも、同じように、輸送 × ドローンのサービスの試みは世界中で進められています。


▲DHLによる、Parcelcopterプロジェクト。離島への緊急の医療品の輸送を目的としている。

では、このようなドローン × (ドローンかけるなにか)の動きは、今後どのような展開になるのかを考えます。

ドローン × 空間

ETH(チューリッヒ工科大学)で行われた”Flight Assembled Architecture”というプロジェクトでは、ドローンで建築をするというプロジェクトに挑戦しています。反射シートをドローンに貼り付け、赤外線を照射することで位置を制御し、軽量のブロックを積み上げることで、3D空間で設計された複雑なオブジェクトの、正確な施工への応用が試みられています。


▲『Flight Assembled Architecture』
Gramazio & Kohler and Raffaello D`Andrea in cooperation with ETH Zurich

また、複数のドローンを集団的に制御する研究も試みられています。

▲プログラミングされた動きのとおりに集団で動くドローン GRASP Lab, University of Pennsylvania

▲高い機動性と機体制御の研究 GRASP Lab, University of Pennsylvania

ドローンを使っての空間へのアプローチの例として、”センサリング”も考えられます。小型のドローンに3Dスキャナや各種センサーを搭載し、空間を飛び回ることでその空間の情報を収集します。

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▲ドローンによる空間の3Dスキャン(http://yellowscan.lavionjaune.com/より引用)


▲『Our Drone Future』 Alex Cornell
ドローンの都市空間への監視目的への応用を予見した作品。ここまで過激なドローンの運用がされなくとも、都市をドローンが飛び回る時代がくるかも。

塵のように小さなコンピューターデバイスを散布しセンサーネットワークを形成、空間にユニバーサルにコンピューターデバイスを配置することで、コンピューターを群として、あるいは環境として利用する、スマートダストと言う考え方があります。(スマートダストについては前回を参照)

ドローンのその機動性と群性、自己完結性などは、膨大なデータを収集するユニバーサルなインフラストラクチャーを構築するプラットフォームの最有力候補のひとつといえます。

今後、ドローンの気象に対する脆弱性や航続距離の問題が解決されれば、軍事分野だけではなくドローンに各種のセンサーを積み、都市や町、ビルの中や生活空間をドローンが網羅的に飛ぶ未来が来る可能性もあります。

今よりももっと小型化され、静寂で、気にかけないとほとんどその存在を認知できないようなドローンが街を飛び回り、あらゆるデータを収集。パブリックなドローンからプライベートなドローンまでが飛び回り、自動販売機を探すように空いているドローンを探して、道案内をしてもらったり、ものを運んでもらったり、さまざまな情報にアクセスできるようになるネットワークが構築されるかもしれません。そのような“ドローンが飛び回る世界”に住むわれわれ人間に何が起こるのか、何を考えておかないといけないか、今、もっと議論がなされるべきところです。

 

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カナオカダイキ Daiki Kanaoka

FabCafe Tokyo Fabエンジニア。英・マンチェスター大学で建築を学び、一時日本に帰国。2012年3月よりオープン直後のFabCafeに参加。FabCafeで勤務する傍ら、2014年3月までnoiz architectsに勤務。デジタルファブリケーションやコンピューテーショナルデザインを駆使した建築設計を担当。各種デジタルファブリケーションのマシンの操作や、3Dモデリングを得意とする。FabCafe Tokyo : http://fabcafe.com/tokyo/