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岩沢兄弟の空間たし算ひき算〜 Vol.04 ふざけるようにつくる、僕らの発想法

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良いデザインは、私たちに「新たな気付き」を与えると言います。そのため、良いアイデア、デザインをつくるためには既知の視点からスイッチして、解決すべき本質的な軸を見出すための「リフレーミング」が必要となります。 今回は、バッタ☆ネイションがゲストとして登壇した2015年7月23日(水)OpenCU主催のイベント『デザインの体幹』でのプレゼンテーションを元に、追記インタビューを行い記事を作成。リフレーミングの方法、クリエイションのあり方、一見奇抜にも見える彼らのプロダクトの裏に隠された思想を語っていただきました。

 

バッタ☆ネイションがやっていること

最初に、バッタ☆ネイションの活動について、プレゼンが始まりました。

岩沢仁(以下、仁) 簡単に説明すると、主な仕事としては、フレキシブルな空間をつくっています。イベントをやったり、みんなでくつろげたり、その都度椅子や机の高さを変えたりできるようなことがポイントになります。「自分がしたいことをする場所を探せる場所」って言えばいいんですかね。考え事したいときはひとりで考えられるサイズなんだけど、みんなで考え事をしたいときは集まって大きな机を形成する、というようにカスタマイズできるような家具や空間をつくっているということです。企業などから企画書やイメージ、模型をつくって、希望があれば直接施工までやります。浅草橋に事務所を構えていて、簡単な制作から試作までは事務所の中でやってしまいますね。

岩沢卓(以下、卓) 兄弟での役割分担というほどでもないんですが、みなさんからは兄が建築・空間の人、弟の僕が映像や音楽の人という認識でいていただいていると思います。

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バッタネイションが設計を手がけた、ロフトワーク10Fのスペース。椅子やテーブルは、目的に応じて毎回のように変更して使うことができる。

 

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▲移動を主目的に置いた車輪家具シリーズ「ホワイトボード W900」

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▲家具などを手がけた柏の葉オープンイノベーションラボKOIL(KOILブログよりhttp://blog.koil.jp/space/20150305_1443/

 

サイズを変えてみる

 ロフトワークとの関わりでは、岡山の倉敷産の帆布をつかったデザインコンペ「HANPU! オカヤマ PROJET」に出して賞をもらってますね。

 帆布を使った新しいプロダクトを考えるコンペ企画で、帆布のスツールをつくって受賞しました。モチーフとなっているのは刺繍枠ですね。刺繍枠を座面に見立てて棒を3本させば椅子になるんじゃないか、と発想したものです。実際に人が座れるサイズでつくってみるとスツールになっていて、座面に刺繍もできます。

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▲岩沢仁(兄)の手がけた帆布を用いたスツール。座面には自分の好きな柄を刺繍できるようになっている。

 

 「日常にあるモノのサイズを変えてみる」という手法はバッタ☆ネイションが制作のときによく使うひとつの方法かもしれません。単純にワクワクしますしね。『デイリーポータルZ』というポータルサイトの企画なんですが、全長3m越えの「ガチャガチャ」を作りました。カプセルは人が抱えて持つ直径30cmのものになっています。

 

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▲全長3mを超える巨大いらないものガチャ。その他にも、「新しい壁ドンを考える」などの企画を手がけている。(デイリーポータルZ http://portal.nifty.com/より)

 

兄弟における役割分担

バッタ☆ネイションの特徴は兄弟ユニットであるところ。普段も一緒に制作などを進めるスタイルだ。

 いつも一緒だと思われがちですけど、普段の制作風景は、バラバラかもしれないですね。または、兄がしゃべっているのを僕が聞き流してるだけとも言えるかも。

 きっと僕がこう考えていて、みたいなことを説明的に話しても、答えてくれないときはつまらないんだなと思って、兄弟歴も長いので、まだまだつくり込みが足りないと割り切っています。つまり、このハードルを越えたら、結構いいものを出せていると言うか、そういう気持ちはありますね。

 これだと、かなり僕が偉そうなんで(笑)少し補足すると、同じ案件をやっているときでも、カードや付箋にアイデアを出し合ったりなんてことはしてないですね。そもそも、そんなに話し合ってはいないかもしれません。また、別にいつも2人で同じ案件をやっているわけではないですよ。ただ、出てきたものに対しての感想は、必ず言うようにしています。模型など具体的なものが出てきたときは、例えば、椅子なら座りやすいかとかコミュニケーションを生むのか、集中するのか、みたいなことを言葉にしていきますね。最近では、具体的なものになるまでは言葉にしないほうがいいかもと考えています。

 自分がつくったものに対して、違うことを言ってくることが面白いと思います。

 

バッタネイションの発想法

これまでご紹介いただいた事例や兄弟での役割分担を踏まえて、バッタ☆ネイションのお二人が考える「リフレーミング力」についてプレゼンは続きます。

 今回、リフレーミング力っていう話を受けたときにまず考えたのが、最後の文字が漢字の「カ(ちから)」なのかカタカナの「力(か)」と同じに見えるなと。視点としては、別に普通ですし、facebookに上げても、「いいね!」押してもらえなそうですけど、自分の心の中で「いいね!」を押して、盛り上げて、繰り返していくための、きっかけが大事なんだと思ってます。音遊びみたいなことですけど、「リ・フレミング」じゃないかとか考えて、スベるの繰り返し……。ここを自分なりのスタート地点にしようと。

batta_reflame6 ▲「リフレーミング」ではなく「リ・フレミング」?!

 

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▲フレミングの法則も写真のフレームを取る構図から考え出された?!

 

実際に指で写真の構図を決めるように指を組んでみて、一本足したら、フレミングの法則になる。まぁ、こじつけなんですけどね。他にも、目隠ししてみるとか、足で同じポーズ出来るかとか考えてみると、結構楽しいですよ。目が見えないときに、部屋のサイズを確認するには、壁に近づかないとダメとか、当たり前のこともやってみると面白い行動だなと。

 電車の中での自分の空間の取り方なんかも似ているよね。何が“パーソナルスペース”を規定しているのか。

 レーモン・クノーの「文体練習」っていう本があるんですけど、その内容は「同じ人間に1日で2回会った」ということをいかに文体を変えていくのか、ということを延々とやっていて、ぱらぱらめくっているだけで毎回面白い発見がありますね。これはつまり、同じ状況に多数の視点を与えてみることで、「パターン」が見えてくることなんですよね。どうも煮詰まっているなぁってときに「自分がどこに煮詰まっているのか」というパターンを探すのが楽になるというこがあります。単純に、視点の移動ができてないから、それを補助するパターンを思い出す。ってことかもしれないですね。

あと、現代美術家の杉本博司さんの「劇場」シリーズも好きで。これは劇場のスクリーンを長時間露光で撮影したもので、スクリーンには一見すると何も映っていなように見えます。でもそれは、ある瞬間を切り取っているようでいて、実は長時間に渡って無数のイメージが、カメラを通過してる、時間を切り取っているんだけど、結果シンプルになっていく。僕の場合、どうしても、映像でいうフレーミング(構図を決めること)から考えてしまうから例が偏ってるかも。

 

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▲杉本博司「劇場」シリーズより抜粋

 

 なるほどね。僕が最近面白いと思ったものだと、あるテレビ番組を観ていて「猫には、僕の声がニャーニャーって聞こえているんですか」っていう話が面白くて。そして、その答えとして「そもそも、君が日本人だからニャーニャーと鳴いてるように聞こえているんだよ。猫自身は、ニャーニャーと思って、あぁ鳴いているわけではない」って答えていたのが、とても面白いなって思いました。こういう視点もリフレーミングと関係していますね。

 美術館に初めて行って、教科書で見たことある絵が予想よりデカかったって体験あるじゃないですか。自分の頭の中で勝手に思ってたサイズはなんだったんだと、ちょっと混乱する。でも、そういうのも面白い体験かなって思いますね。Webやタブレットで見る行為が増えてきて、昔よりも、スケール感が崩されてきているのかなって感覚がありますね。そういう意味だと、ショックはデカいほうがいいかもしれない。

 

ふざけるようにつくる

ここから、プロジェクトにアサインされたときの現場でのポジションの話に。どのようなスタイルでものづくりを進めていくのでしょうか。

 一番大切なのは、空気をつくることを意識しています。あとは自分の見た目とのギャップは大事にします。オフィスに長いヒゲでモヒカンなやつが来たら、「こいつ大丈夫か?」って思うでしょうから、そこに対しては、ちゃんとしようというのは、ありますね。そもそも、相手から見た自分のハードルを下げておくと、普通にしてるだけで「思ったよりちゃんとしてるな」って、勝手に良いほうに解釈してくれる。とはいえ、会議室とかだと浮く格好をしているわけなので、「何か面白いことを言うんじゃないか?」という期待に自分を晒すということも同時に意識してます。会議での役割が、ちゃんとしてないことを言う係。

 バッタ☆ネイションの仕事に共通していることと言えば「ふざける」ことですかね。悪い意味ではなく、まずはふざけるように考えてみて、結局つくるものは真面目なものだったりするんですけど(笑)。でも、いつもこいつらバカだねって言われるのも成功なのかなと思っています。

 例えるなら、検討違いのところに着地させることは目的ではなくて、サイズやフレームをゴムのように伸ばして考えることは意識しますね。椅子がゴムだとふにゃふにゃして座りにくい、とか。ふざけるってってことは結構労力が必要なことだと思います。アイデアを出すことを“真面目に”頑張っていると、バカっぽいものを少なくしようって思いますよね。そんなとき、例えば「1階から階段を上がってきて、最上階に上がってきたときだけアイデアを言っていい」とかルールをつくって、場を崩してみると面白いと思います。そういう無茶苦茶なアイデアを一回出すんです。それはさすがにやめようってなっても、じゃあプールで25m泳いだらアイデアを発言していいとか、そういうちょっとひどいことを考えてみて、みんなが耐えらえるものの中でアイデアを出すってやるといいかもしれない。ま、完全に思いつきですし、それが正解かは実際わかりませんし、疲れるから僕はやりませんけど。

 打ち合わせがマンネリ化してきたのであれば、単純な話、場所を変えるとかもいいですよね。きっとソファで打ち合わせしていると腰が重くなって眠くなってきたりするので、腰の高さ位まである机でご飯を食べならがらやってみるとか。あと、いつものメンバーではなく新しい人を加えてみるとか。

 意外に煮詰まったときにこそ新しいアイデアが生まれるチャンスだと思っています。煮詰まって何も進まないってなったときに、そういう場でこそ誰もが言わなさそうな「もういっそ、やめちゃいます?」みたいなことを言うと、突然誰かがそのプロジェクトへの愛情を話しだすことがあるんですよ。実はこれにはこういう思い入れがあって、前身のサービスは……とかを語り始めると、これこそヒントなんです。ただ、本当に終わっちゃうと困るんで、そこらへんのさじ加減も大事ですね。

あとは、率先してなんでも面白がるようにもしています。小さなアイデアではあっても、それ面白いですね!って実は50%位しか思っていなくても、面白がりますね。そして、無理矢理それを広げていくっていうことはやりますね。それを足がかりにして、さらに広げていきます。アイデアの出し方は、うまい人が多いので、バカみたいに喜ぶ係に徹してみるとか。アクセルを無駄踏みして、上手くこなせるだけの会議にならないように、幅を広げる感じでしょうか。真面目にコツコツやってくれる人が居るからこそ、できるという思いはありますね。

 あと、ふざけても怒らない心の広い人も重要だね。そういうところかがチームづくりで意識しておきたいところです。

 

今回、知っているようで詳しくは知らなかったバッタ☆ネイションのクリエイションの秘訣を語っていただきました。兄弟であるがゆえに、言葉にしなくても通じ合う部分が創作におけるひとつの判断基準になっている、ということはとても興味深いお話でした。また、考え方をいかに“ズラす”のかということも、お二人のキャラクターや個性がそのまま出ていて、納得する部分や学ぶ部分が多かったです。みなさんも、良いアイデアを生み出すためにバッタ☆ネイションの方法を見よう見まねで真似るとことから始めてみてもいいかもしれません。


アーキテクトを探せ!Vol.4 ゲスト:西田司

 

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アーキテクトはもともと建築家という領域で使われていました。しかし、従来の「建築」の意味が拡張され続けている現在、ただ単に「空間=ハコを設計する」にとどまらない活動が一般化してきました。さらに、Webやシステムを空間にみたて情報アーキテクトという呼称も一般的になっています。本イベントは、アーキテクトの拡張した領域をゲストと共に刺激的なトークセッションを通して浮き彫りにし「これからのアーキテクト像」を描いてみる試み。第4弾では、震災復興のプロジェクト、石巻2.0の参画メンバーである、建築家・西田司さんをゲストに迎えます。自身の設計事務所「オンデザインパートナーズ」では、雄勝 Moriumius、鎌倉味噌工房、港湾関連施設:湘南港ヨットハウスなどの建築を中心とした、「建築をひらく」と題した複数のプロジェクトを実施しています。「ひらく」というキーワードに込められた、地域との関係性やその建築がひらく対象とは何か?気になるその実際をトークで深掘りしていきます。

http://layout.net/event/architect-vol4-nishida/

日 時

2015年10月21日
19:30-21:30

場 所
FabCafe Tokyo(渋谷・道玄坂)

参加費
1,500円(ワンドリンク代付き)

 

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岩沢兄弟の空間たし算ひき算〜 Vol.01:現代オフィス考
岩沢兄弟の空間たし算ひき算〜 Vol.02:飛騨訪問から見えた合宿所のあり方!?
岩沢兄弟の空間たし算ひき算〜 Vol.03 屋台とはなにか?その意味を考えてみました

取材/構成・文:LAYOUT編集部

協力:千葉工業大学山崎研究室

 

バッタ☆ネイション

兄:岩沢 仁 Hitoshi Iwasawa
1974年千葉県出身。多摩美術大学卒。空間デザイナー/車輪家具プロデューサー/岩沢仁卓/有限会社バッタ☆ネイション代表。店舗やオフィスなどの空間デザインからイノベーション家具の提案、デザインを手掛ける。旭化成 VEGEUNI DESIGN AWARD 2012 最優秀賞。CINRA / DLE/Loftwork Lab /AOI DC /高気圧/などのオフィス空間を手掛ける。KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)に「車輪家具」を納車。自身でも家具の試作や作業なども行う。

弟:岩沢 卓 Takashi Iwasawa
学⽣時代よりフリーランスとして映像制作/ウェブ制作などの仕事を⾏い、2002年有限会社バッタ☆ネイションを仁とともに設⽴。テレビ番組連動フラッシュサイトの制作や、番組公式サイトの作成などを⼿がける。共著/部分執筆に、『USTREAMビジネス応⽤ハンドブック』『Ustream配信完全ガイド』がある。
Twitter https://twitter.com/battaiwa
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